火精
第6話・・・「不確かな覚醒」

「ねえ、有宇子」
 1時限目の国語の授業が終わると、早速由紀がわたしの席にやってきた。きっとご主人様のことを問いただすつもりだろう。
「亜矢さんのこと?」
「そう、イキナリ名前で呼び合ってるし、べったりくっ付いて登校してくるし、人見知りの激しい有宇子がどうしたの?」
「名前で呼び合おうって、昨日約束しただけだよ。それに由紀だってわたしにベタベタするじゃない」
「う〜ん、でも〜」
 まだ不満そうだ。
「ねえ由紀」
「な、なに?」
「わたしと由紀、親友だよね?」
 わたしは由紀に問う。
「何言ってるのよ、あたり前じゃない。それとも有宇子はわたしが親友じゃ不満?」
「違うの」
 わたしは首を振った。
「わたしと親友なら、亜矢さんとも仲良くしてほしい、だって、自分の友達同士が仲が悪かったら、わたし悲しいよ」
 わたしは目に涙を浮かべ上目使いに由紀を見上げる。由紀は目を潤ませながらわたしの頭を抱き寄せた。
「うん、そうだよね。有宇子の友達ならわたしにとっても友達だし、有宇子の親友ならわたしにとっても親友だ。変なヤキモチ妬いちゃって、わたしらしくなかった、ゴメンネ有宇子、悲しい気分にさせちゃって」
 成功成功、由紀はわたしのあのポーズに弱いんだ。チョット罪悪感があったけど、これで由紀とご主人様が仲良くなってくれれば・・・わたしは淡い期待を抱いた。
「あれ?」
 由紀が突然身体を離した。
「どうしたの?」
「今日は嫌がらないんだ?」
 そうだった、いつもなら由紀にか頭を抱き寄せられると、嫌悪感があったのに、今はなんともない。ご主人様とエッチなことした影響だろうか?
「だって、由紀がご・・・亜矢さんと仲良くしてくれるって言ったから、嬉しくて」
 わたしは適当にごまかした。
「それに、なんだか背が高くなったような・・・・」
 え?背まで高く?胸や毛髪だけじゃなくて、身長まで伸びてた?そういえば、心なしかスカートの裾がいつもより短いような・・・
「やだ由紀、気のせいよ、一日でそんなに背が伸びるはずないじゃない」
「う〜んそうかな?まあ、有宇子もついに成長期を迎えたってことにしとくわ」
「モー」
 わたしが怒ってほほを膨らます。
「あ、もう次ぎの授業始まっちゃう」
そう言って自分の席に逃げ帰った。
 ・・・ど、どうなっちゃったの?わたしの身体。本当に、本当に人間じゃ、恐ろしい塑像が再びよみがえった。

「柏木さん、君、ノーパンだろ」
 昼休み、トイレに行こうと教室を出たところで、突然後ろから声をかけられた。
 ドキッとして後ろを振り向くと、クラスでも目立たない安藤というおとなしめな男の子が、ニヤニヤとイヤラシイ笑みを浮かべて立っている。
「と、突然ナニ言ってるのよ」
 わたしは無視を決め込んでトイレに向かおうとした。
「ここでスカートめくってもいいの?」
 わたしは立ち止まり振り向いた。
「な、ナニが目的よ・・・」
「つ、ついてきなよ」
 そう言うと安藤歩き出した。わたしは仕方がなく後をついていく。

「へへへ、よく見れば誰だってわかるよ、ずっとスカート気にして、不自然な歩きかたしてるし、下着のラインが見えない」
 今は使われていない旧校舎の裏につくと、彼は突然饒舌になった。
「僕は、ずっと柏木さんのこと見てるから、毎日毎日ね。少しでも不自然なところがあればすぐにわかるさ」
 な、ナニ言ってるの?
「ずっと好きだったんだよ、柏木さんのこと、入学式ではじめて見たときから」
「そ、その好きだった女の子のこと脅すんだ?」
「だって、君がいけないんだ、僕は見ているだけで幸せだったのに、そんな淫らな格好で挑発するから」
「ちょ、挑発なんて・・・」
 わたしは動揺。こいつおかしい、頭がどうかなってるんじゃないの?
「挑発してるだろ、ノーパンで」
 目が血走ってる、尋常じゃない。
 わたしは振り返って逃げ出そうとすると、やつは後ろからしがみついてきた。
「い、いや」
 わたしは悲鳴をあげる。
「に、逃がさない、それに悲鳴をあげても無駄だ。声なんてどこにも届きっこない」
 うかつだった、どうせこんな奴じゃ、何にもできやしないとたかをくくって、こんな人気のない旧校舎裏までノコノコついてくるなんて、ああ・・・
「ひ、ひひひ、か、柏木さんのオッパイだ」
 制服の上からわたしの胸を乱暴に貪る。
「痛い、やめて」
 わたしは声を荒げる。
「痛いんじゃないだろ、気持ちが良いんだろ」
 そう言いながら、安藤は稚拙で乱暴な愛撫をわたしの双丘へ続ける。
 嫌、痛い、気持ちがよくなんてない、助けて、ご主人様助けて。
 心でいくら叫んでも、助けは現れない。
「こ、ここも気持ちが良いんだろ?」
 安藤は乱暴にスカートの中に手を差し込んだ。
「嫌、触らないで」
 わたしのアソコを、安藤の乱暴な手がいじりまわす。
「ほら、濡れてきた、柏木さんのオマンコ、濡れてきたよ」
 え?そんな馬鹿な・・・
「嘘、そんなわけない」
「でも、ほら、よく聞きなよ」
 あ・・・
 わたしの股間からグシュグシュとイヤラシイ音がする。
 濡れている、ご主人様じゃないのに、ご主人様以外で感じるなんて・・・嫌、嘘。
「ほ、ほら、段々愛液がこぼれてきた」
 そう言うと、安藤はわたしのイヤラシイ液体で濡れた指を、わたしの目の前に突きつけた。
「や、やめてよ、この変態」
 ご主人様に触られたときと違って、身体は反応するものの、心が屈することがない。ご主人様にされるとチョット触られただけ、口で言われただけで、簡単にエッチな気分になり、どうにかなってしまうのに、安藤に触られても、ちっともそんな気分にならない、それどころか嫌悪感だけが感じる。
「何が、嫌なもんか、こんなに感じてるくせに」
「うるさい、あんたに触られても、ちっとも気持ちのイイもんか」
「な、なんだと、こんなに濡れているくせに」
「な・・・」
 わたしは反論できなくなった。
 たしかに身体は反応してる、快感を感じている・・・いや、そんなはずない、ぜんぜん気持ちがよくなんてない、ぬ、濡れているからって、気持ちがイイわけじゃない。
 しかし、安藤は勝ち誇ったように、わたしの胸とアソコを触りまくる。
 く、悔しい、こんな奴に、ご主人様以外の奴に・・・身体の中の炎が怒りで大きくなり始めた。
「か、柏木さん、これ、さ、触って」
 奴はそう言うと、わたしの手を取り、ナニかに触れさせた、熱い5センチくらいの棒状のモノ、硬いような、やわらかいような。それを無理やりわたしに握らせる。
「あ、ああ、か、柏木さんが、ぼくのチンチン握ってる」
「え?」
「き、気持ちいよ、柏木さん」
 チ・・・こ、こいつわたしにそんな汚らわしいモノ握らせ・・・怒りが立ちこめる。
「や、やめてよ、そんな汚いもの」
「は、は、は、い、イイよ柏木さん」
 わたしの耳元でアエギ声をあげる安藤。
 コイツ、もうわたしの声なんて聞こえていない。一人でよがってるだけだ。
「あ、ああああぁぁぁ」
 耳元で安藤の悲鳴、手に暖かい液体がかかる。コイツ、イッた?
「き、気持ちよかったよ、安藤さんの手の中に出せるなんて、ああ・・・」
 わたしの中の炎が巨大化する。安藤のモノを握らされている手が炎に包まれたように熱くなる。
「ぎ・・・」
 奴の声にならない悲鳴が聞こえ、わたしの身体は前につき飛ばされた。
「あ、あぁあああ」
 安藤の悲鳴。
 振り返ると、奴は自分の股間を抑えうずくまっている、自分の手を見ると、青白い炎に包まれていた。
「な、ナニこれ?」
 青い炎は燃えつづける、わたしの制服を燃やすでもなく。
 熱い、焼かれるような熱さなのに、心地イイ、炎の熱さが苦痛じゃない。
 そうだ、あたり前なんだ、わたしがこの炎を苦痛に感じるはずがないんだ、この炎は、わたしの心の炎、わたしの身体の一部なんだ。
 わたしを辱めようと、汚そうとしたこの薄汚い下等動物を、消し炭に変えるためにわたしが呼び出した炎、わたしの「チカラ」・・・そうだ、燃やし尽くせ、ご主人様の下僕であるこのわたしに、手を出そうとしたおろかな牡を、魂までも焼き尽くしてやれ。
 わたしが右手を安藤に向かって突き出すと、青白い炎は渦を巻いて安藤に襲いかかる。奴はあっという間に火ダルマになり、悲鳴をあげるまもなく、モノの数十秒で骨ひとつ残さないで燃え尽きた。

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